MYM

MYM/2023～2024

京都府南丹市美山町の古民家と蔵を蔵サ
ウナ付の宿泊施設にコンバージョンする
計画である。美山町は由良川水系の綺麗
な水源と豊かな自然、農村風景が色濃く
残る地域である。オーナーは暇さえあれ
ば日本各地のサウナを訪ねて旅へ出るほ
どの大のサウナ好き。（ここ数年の間で、
サウナってホントに旅の目的になったな
ー。）好きが高じて自らサウナ運営をす
るべく、数年前にこの家屋を購入した。

出会いはもちろんサウナ

オーナーとの出会いもサウナ旅。私が地
域住民と運営しているパブリックハウス
アンドサウナ久米屋に来てくれたことが
きっかけだ。久米屋の蔵サウナにえらく
感激されたようで、今回のプロジェクト
に際して、声をかけていただいたのだ。
こうして、美山版の蔵サウナ付き宿の計
画が始まった。

パブリックハウス＆サウナ久米屋
https://nakaute.com/

サウナ付きの一棟貸宿
パブリックサウナ

家屋はそこまで古くなく、目立った損傷
も少ない。敷地内には母屋の他、蔵、離
れが2棟、農機具置き場が使われずに残っ
ていた。依頼当初からサウナの他、キャ
ンプ場としての営業、飲食提供をする等
敷地全体を使った自然のアクテビティを
提供する構想もあったため、なるべく将
来構想のハードルにならないように許可
関係の整理は慎重におこなった。

パブリックハウス＆サウナ久米屋
の改良版

久米屋よりも良いものを。
久米屋でできなかったこと、反省点など
をすべて詰め込んだ。プラン、使い勝手
換気、サウナ室の2次的な利用、そして
特にサウナの心臓部分のストーブの設計
にはかなり熱が入った。

サウナ用のメイスンリーヒーター

久米屋も美山もサウナストーブは薪を燃
料とした蓄熱ストーブ（＝メイスンリー
ヒーター）を採用している。
久米屋もそうだけど蓄熱ストーブは性質
上、火焚き後、ある程度時間がかけない
とストーブのマテリアルであるレンガが
熱を外に発しないため、サウナ室内が暖
まらない。火を焚くのに『時間がかかる
』ということはサウナを開設して事業を
する人たちにはネックなようで、サウナ
開設の相談に来られるものの、薪を使っ
た蓄熱ストーブを導入する人はほとんど
いない。それもそのはずで、久米屋のス
トーブはお世辞にもデザインされたとは
言いづらい素人施工のストーブで、かつ、
属人的な火焚きの仕組みのためか採用を
躊躇するのだろう。これをみた人からは
再現性が難しいと揶揄される。しかし、
久米屋では僕と三郎おじさんが交代しな
がら日々アップデートしながら火を焚い
ている。これまで何百回と火を焚いて、
サウナを温めるために時間を費やしてき
た。そのおかげで、サウナと蓄熱ストー
ブの相性の良さが分かってきた。実は
『時間がかかる』のは最初だけで、「蓄
熱ストーブ」は連続して使えば使うほど
は熱を重ねられる。そして、お客さんが
入っているときは火を焚くことがないの
安全面としての担保できる優れものなの
だ。

蓄えた熱を活かすための
換気システム

美山の蔵サウナは第2種換気を採用して
いる。サウナ室が若干、正圧ぎみになる
ことで、常に新鮮な空気を取り入れるこ
とができる。また、室内上下の温度差を
緩和するために機械式の循環ファンを設
置し、必要に応じて天井部分の暖まった
空気をベンチ下に送風している。このこ
とにより、ロウリュウ後の熱気がサウナ
室内に浮遊した不思議な状態を作ること
ができた。言うなればベンチ下で小さい
アウスグースおじさんが風を送っている
ような感覚である。

作りながら、考える
使いながら、作る

サウナストーブはWS形式でつくること
にした。このストーブはどこのホーム
センターでも売っている耐火レンガと
普通レンガを組み合わせて作るオリジ
ナルの蓄熱型サウナストーブ。汎用性
のある材料とモルタルを練って積むだ
けのとても単純な作業の繰り返しだけ
で誰でも作ることができる。特殊性や
専門性を排除することで誰もが加わり
やすい、原始的な建築行為。そしてつ
いに、美山の蔵サウナは完成した。愛
されもののはせやんがつくる愛らしい
蔵サウナに携われたことをとてもうれ
しく思う。完成してからは設計者と発
注者の立場から、オーナー同士、また
は、火焚きおじさん同士の関係になり
、サウナを通じたコミュニケーション
は続いている。

愛されものの、はせやんが作る　
Earthing MIYAMA をどうぞ御贔屓に。

Earthing MIYAMA
https://earthmiyama2023.heteml.net/